留年も転校もかなりの自由度のドイツ
我が家の子ども達は現在ベルリンの公立ギムナジウムに通っていますが、クラスメイトの中には転校する子や留年している子が複数います。
「留年」と聞くと、日本だとワケありなイメージで通常の進学校であれば留年生も稀な存在ですが、ここドイツではとてもメジャーな存在です。
少し古い記事ですが、2016年のターゲス・シュピーゲル紙によると、ベルリンだけで2015年に約3,000人の小中高生が留年し、そのうち1,075人は任意の留年だったそうです。
Wann bleibt man sitzen – und was bringt es?
引用元URL:https://www.tagesspiegel.de/berlin/schule/ein-schuljahr-wiederholen-wann-bleibt-man-sitzen-und-was-bringt-es/13860540.html
かくいう我が子も小学校の時に「任意での留年」を一度しています。国語(ドイツ語)の問題があったり、校風があわない、思春期で勉強に身が入らない…etc. 様々な理由で留年したり転校する子ども達がいます。
日本だと「そんな個人的な理由で!?」と驚かれる気がしますが、ドイツではそこは自由な選択肢が提供されています。
しかし『自由』には『責任』も伴うもの。
成績が振るわず「落第点」を取ってしまうと、容赦なく留年させられてしまうのもまた事実なのです。
ギムナジウムに進学したものの、イマイチ勉強に身が入らない息子が留年となるのではないか?と考え(なったらなったで仕方がないが)、いったいどんな条件で留年となるのかを調べてみました。
ベルリン学校法(Schulgesetz)での留年条件
ドイツは州法によって学校法が決められているので、それぞれの州によって学校のシステムが若干異なるようです。なので、ベルリンの学校法での留年条件を長女に手伝ってもらいながら調べたところ、以下のようにありました。
Sek I-VO Berlin – § 31 Versetzung(抜粋)
- Versetzt wird, wer in höchstens einem Fach mangelhafte[5] Leistungen bei ansonsten mindestens
ausreichenden[4] Leistungen erzielt hat.
5を一つ、残りは全部4の場合 - Versetzt wird auch, wer entweder für mangelhafte[5] Leistungen in höchstens zwei Fächern oder für ungenügende[6] Leistungen in höchstens einem Fach einen Notenausgleich nach Absatz 3 nachweisen kann.
5を二つまたは6を一つとった場合(ただし以下のような方法でバランスをとることができる)
Ausgeglichen werden können
バランスをとる方法
- Mangelhafte[5] Leistungen in zwei Fächern durch mindestens befriedigende[3] Leistungen in zwei anderen Fächern oder
5を二つとった場合は3を二つ取る、または - Ungenügende[6] Leistungen in einem Fach durch mindestens gute[2] Leistungen in zwei anderen Fächern.
6を一つとった場合は2を二つ取る。
Gehört eine der beiden mangelhaften[5] Leistungen nach Satz 1 Nummer 1 zur Fächergruppe Deutsch, Mathematik, erste Fremdsprache und zweite Fremdsprache (Kernfächer), muss mindestens ein Fach dieser Fächergruppe zum Ausgleich herangezogen werden.
二つの5のうちの一つが主要教科(独・数・第一外国語・第2外国語・選択した場合は第3外国語含む)だった場合は他の主要教科で2を一つ取る。 - Bei mangelhaften[5] Leistungen in mehr als einem Kernfach oder ungenügenden[6] Leistungen in einem Kernfach ist ein Ausgleich ausgeschlossen.
★もし二つの5、または一つの6が共に主要教科だった場合は、バランスをとることが出来ない - Im altsprachlichen Bildungsgang gehört die dritte Fremdsprache zusätzlich zu den Kernfächern gemäß Satz 2 und 3.
選択した場合の第三外国語も主要教科に含まれる
【注釈】それぞれの成績(Leistung)と点数(Note)の相関は以下の通り
- sehr gut=1
- gut=2
- befriedigend=3
- ausreichend=4
- mangelhaft=5
- ungenügend=6
[引用元]
Schulgesetz Berlin : https://www.schulgesetz-berlin.de/berlin/sekundarstufe-i-verordnung/teil-ii-schulartbezogene-regelungen/kapitel-2-gymnasium/sect-31-versetzung.phpWikipedia – Schulnote : https://de.wikipedia.org/wiki/Schulnote
結構細かく決まっているんですね~!
特に気を付けたいのは、★もし二つの5、または一つの6が共に主要教科だった場合は、バランスをとることが出来ない。主要教科で6を一つとってしまうと、一発退場となってしまう訳ですね。この主要教科とされる科目のうち『第2外国語』が実は鍵のような気がします。
殆どのギムナジウムは第1外国語=英語で、第2外国語はそれぞれ異なりますが、ポピュラーなのはスペイン語かフランス語です。そして人気が高いのがスペイン語。人気のあるスペイン語は、成績優秀者から埋まっていく場合が殆どらしく、フランス語選択クラスには希望から漏れてしまった子も多くいます。つまり、元からあまりフランス語学習に乗り気でないので、躓く子も多いのではないでしょうか。
自主的な留年も選択できる代わりに、授業についていけない者は容赦なく切り捨てるような一面もあるのがドイツ。特に大学進学目的の学校であるギムナジウムは「勉強する気がないなら去りなさい」という姿勢で一貫しています。
しかし留年させられることで子どもの自尊心が傷つき、成績の向上には繋がらなかったり、最終的に学校を辞めてしまうようなケースがままあるため、留年させるシステムの見直しを求める声もあるようです。
日本とドイツ、どちらの教育システムが良いかは、子どもの気質にもよるかもしれませんね。